SSブログ

マタイ受難曲から [音楽]

バッハのマタイ受難曲は、大曲ではあるけれど、
マタイ福音書に沿って、イエスが受難するまでの
ストーリを聖句や賛美歌、自由詩などで構成する。

自分が日々繰り返し聴くのは、たった一曲なので、
バッハに対して失礼かもしれないなと思う。
しかしその理由もそれなりにある。

それは「ペテロの否認」のあとに歌われる第39番の
アルトのアリア。バイオリン曲として独立して演奏される
こともある切ない旋律である。

ある人はマタイ受難曲の中の最高峰、いやアリアの中の
頂点に位置するとまで言う。自分もほぼ賛同したい気分。
大げさに言えば、人類史上最大の嘆きと後悔の歌と
言っていいのだろうと思う。

なぜなら、いちばん弟子と自認していたペテロが、
イエスが逮捕される晩に、意に反して(?)、
3度の裏切りの言葉を発してしまったからだ。

イエスの逮捕劇が進行する庭で、遠巻きに見ていた
ペテロに対して、ある女中が、お前もあのガラリア人
イエスと一緒にいたはずだと指摘する。
ペテロは、あなたが何を言っているのか分からないと
否定して、出て行こうとする。

と別の女中が、やはり言う、この人はイエスと一緒だった。
するとペテロは、そんな人は知らないと否定する。

そのうち周りの人々が集まって、
あなたは確かに彼らの仲間だ、言葉づかいでわかる。
対して、ペテロは3度否認する、
その人のことは何も知らないと。

人間の関係のなかでいちばん辛らつなのは、
知っている人に対し、知らない、自分は無関係だ
と言ってしまうことだろう。
命にかけてイエスについて行きますと、
先刻誓ったばかりのペテロだった。

3度目の否認のあとに、イエスの予言どおり、鶏が鳴く。
ペテロはそれを思い出し、外に出て激しく泣いた、
と福音書は記述する。言葉は短いが、
いい年したオヤジのペテロが外で激しく泣いたということだ。

39番のアリアは、この後悔と神への憐憫を請う曲である。
バッハが作った歌詞はやはり短い。
しかしこれ以外にないのだろう。

「哀れんでください 私の神よ!
私の涙ゆえに!
私をご覧ください
心も目もあなたの前で
激しく泣いています」

Youtubeで検索すると、たくさんの歌い手が
アリアを歌う動画が出る。
お気に入りの歌を数曲、iPhoneにダウンロードして
次々と聴く。繰り返し。
ドイツ語はよく分からないが、
歌詞はMein Gottだけ聞える。
やはりバッハに失礼な視聴者だ。

対訳を参照すると、憐れみたまえ(Erbarme dich)
のフレーズが繰り返し、繰り返し、
曲中にいくども現れる。

(2015-08-21 SNS日記より)

にほんブログ村 哲学・思想ブログへ
にほんブログ村

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 仏教へ
にほんブログ村

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。