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ふかく了解した人は [浄土真宗]

妙好人とは、浄土真宗の信仰をふかく会得した、在家の方である。
先日、三河のおそのさんという妙好人の言動を知る機会があり、
そのこころに感銘を受けた。

おそのさんは、農家の出身で、鈴木玄通という藩主お抱えの医師の家に
女中奉公をしていた。玄通の奥方が亡くなり、このおそのさんが、
後添えとしてもらわれた。
百姓の娘が藩医の奥様として格式の高い家に入ったので、
ずいぶんと見下げられ苦労したとのことだ。

しかし頭のよい女性だったのだろう、読み書き算盤、
医者の嫁としての教養を身につけてしまった。
鈴木家は竜泉寺という浄土真宗の檀家でもあったので、
しだいに信仰の道にも深く通じるようになったようである。

深い信仰を持つ人として、その名はしだいに広まり、
遠地のお同行さんが、おそのさんに教えを請うほどになった。

伊勢から訪ねてきたお同行が訊いた。
自分は長いこと聴聞してきたが、どうしても信仰が得られず、
疑いが消えず心も晴れない。
どうしたらいいか、との相談。
するとニコニコしながら、おそのさんはその秘密、
ほんとうに知りたいかと聞く。

秘密があるならぜひ聞いてみたいというと、
わかった、これから言う言葉を2、3年言い詰めに言うとよい。
信心が得られると答えた。
そして、「お差し支えなし、ご注文なし」と言う言葉を与えた。
その女性は、「お差し支えなし、ご注文なし、お差し支えなし、
ご注文なし」と称えながら帰っていった。

その3、4日後、その女性がふたたび、おそのさんを訪ねてきた。
「おっしゃったとおり、あれから毎日、お差し支えなし、ご注文なし、
と称えてきたが、自分のこころはいっこうに変化がない。
どうしたらいいのでしょうか」

「お差し支えなし、ご注文なし。」
と、おそのさんは、答えた。

お同行の女性は、
「いえ、それはよくわかるのですが、
そう言っても聞いても、わたしの心はちっとも変わりません。
これをどうしたらいいのでしょうか。」

おそのさんは、厳しくこう言った。
「お差し支えなし!ご注文なし!」

その女性は、はじめてほんとうの意味を悟ったのだろう、
こう気がついたそうだ。
「あっ、仏さまがそうおっしゃっているのですね。
いままで私の心を眺めて、こいつが聞いてくれない、
わかってくれないと、自分の心ばかり眺めて、
直そう、直そうと考えておりましたが、
自分で心得違いを治せるような者じゃあございませんでしたなあ。
ありがとうございます。」
と得心がいったという。

反省とか修行とか、自分でしっかりとしなければならないと
真面目に考える人ほど、自分が自分がとコントロールタワーで
あり続けようとする。
しかし、このコントロールタワーが、
悩みや苦労のみなもととなっていることもある。
それが信仰を妨げていることもある。
そのポイントを、おそのさんは短い言葉で突いたのだ。
そのままで、「お差し支えなし、ご注文なし」と。

        「妙好人に学ぶ」芦屋仏教会館編より

(2015-06-13 SNS日記より)

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